グロテスク|桐野夏生|おすすめ小説ランキング

グロテスク|桐野夏生

グロテスク|桐野夏生 辛口感想

 

 

『OUT』 『柔らかな頬』など、単なるミステリーにとどまらない作品を生み出してきた桐野夏生が、現実に起きた事件をモチーフに新たな犯罪小説を書き上げた。自身をして「その2作を超えて、別のステージに行ったかな」と言わしめた作品だ。
主人公の「わたし」には、自分と似ても似つかない絶世の美女の妹ユリコがいた。「わたし」は幼いころからそんな妹を激しく憎み、彼女から離れるために名門校のQ女子高に入学する。そこは一部のエリートが支配する階級社会だった。ふとしたことで、「わたし」は佐藤和恵と知り合う。彼女はエリートたちに認められようと滑稽なまでに孤軍奮闘していた。やがて、同じ学校にユリコが転校してくる。
エリート社会に何とか食い込もうとする和恵、その美貌とエロスゆえに男性遍歴を重ねるユリコ、そしてだれからも距離を置き自分だけの世界に引きこもる主人公。彼らが卒業して20年後、ユリコと和恵は渋谷で、娼婦として殺されるのだった。
いったいなぜ、ふたりは娼婦となり、最後は見るも無残な姿で殺されたのか。そこに至るまでの彼女たちの人生について、「わたし」は訳知り顔で批判を込めて語っていく。しかし、ユリコと和恵の日記や、ふたりを殺害した犯人とされる中国人チャンの手記が発見されるに従い、主人公が本当に真実を語っているのか怪しくなってくる。つまり「わたし」は「信用できない語り手」だということが明らかになってくるのだ。その主人公に比べ、日記であらわになるユリコと和恵の生き様は、徹底的に激しくそして自堕落である。グロテスクを通り越して、一種の聖性さえ帯びている。

 

グロテスクをネットで調べてみると、もともとは「古代ローマを起源とする異様な人物や動植物等に曲線模様をあしらった美術様式。(Wikipedia)」とのこと。グロテスク装飾として古代に使われていたようですが、今では、醜怪、不気味なものを指して使われています。もちろん、この小説も後の方の意味で使われています。

 

この小説に関しては、2つの点で興味深いものがあります。冒頭のあらすじと解説のところにも書かれています。

 

まずは、現実に起きた事件をモチーフに、なぜ、一流会社のOLが売春を行い、そして殺されたのか。その生きざまをエリートとして名高い中高大一貫校の時代にさかのぼって書かれている点。
完全なヒエラルキーのなかで、2人の主人公(美貌を持つユリコと努力だけを信じる和恵)が、それぞれが生まれ持つ能力で生き抜いていく過程そのものがグロテスクに映っていることが印象です。そして、ヒエラルキー社会でいくて行くための心の葛藤そのものが生々しく、奇怪で、おぞましいものであることが気味の悪いほど伝わってきます。また、そうしたなかで生き抜いてきた人間が人生の半分ほどの年月を重ねた時点で内的には何も変わっていないどころかそのグロテスクさが一層増しているところを表現している筆者の執念というか何というか…。

 

また、もう1点は、この小説のストーリーテラー的な位置づけであるユリコの姉です。メインのストーリーはユリコと和恵の物語であるのですが、ユリコの姉もまさにヒエラルキー社会の中で生き抜いてきた犠牲者であるように感じました。ユリコという美貌をもつ怪物を幼少の頃から、憎み、恐れ、そして、それに解放された学生生活でもその影を引きずり、最終的にはまた、ユリコが入学してくる。ヒエラルキーで生き抜かなければならない本能とおいかけてくるトラウマのなかで育っていく姉の性格は、最終的に死んだユリコの息子である百合雄との出会いにより、同じような道を歩んでいく。

 

私は、ユリコと和恵というよりは、ストリーテラーであるユリコの姉の方が最終的にグロテスクに感じてしまったのです。

 

一言でいうと後味が悪いということなのでしょうが、出口のない小さな小さな世界から抜け出せずに成長して大人になってしまった女性たちの最悪の行く末なのではないかと感じました。

 

ただ、面白いのが、どの女性たちも一般的には落ちてしまったように見える状況を理解しながらも、一切の後悔をせず、自分の道を信じて歩いていたことです。自分自身を納得してというのと全然違います。諦めているというのも違います。思春期のごくわずかな時間に経験したことが唯一正しいと信じてきた偽りの真実だけを信じて。

 

その考え方そのものがグロテスクだ、筆者は言っているのだと思います。

分類

評価

コメント

クライム小説 グロテスク

後味もそうですが、読んでる途中でもグロいです。まさにグロテスク。

ランクの目安は下記を参考にしてください。

「やめとけ!買うというより読んじゃダメだ。」というレベル。

「やめた方がいい。買うと損するぞ。」というレベル。

「時間があったら読んでもいいんじゃない。」というレベル。

「割といい感じだと思う。」というレベル。

「すごくいいぜ!読む価値あるよ。」というレベル。

「絶対読んで!何が何でも読んでね。」というレベル。
選定した本及び感想については大きく偏っている可能性もありますが、実際に読みたかった本や話題の本などを自分の好みに合わせて読んでいるだけなので、何を意識したものでもありません。また、ここで記述されてある感想についても管理者自身の感想となりますので、何かを保証するものではありません。

読書好きのための良いものグッズ

『美月幸房』
ブックカバー 帆布製


Beahouse
ブックカバー/ブラック


Beahouse
ブックカバー/マーブルブラック


リサイクルレザー文庫版
ブックカバー/キャメル


etranger di costarica
ブックカバー四六判/ブラック


ワールドCP
ブックカバー文庫版/ブラック


レイメイ藤井
ブックメイト/ブラック


フランク・ロイド・ライト
ブックマーク MoMA


ブックダーツ
チョコラベル75個ミックス



 
おすすめ小説TOP 掲載小説一覧 プライバシーポリシー お問い合わせ