愛と幻想のファシズム|村上龍|おすすめ小説ランキング

愛と幻想のファシズム|村上龍

愛と幻想のファシズム|村上龍 辛口感想

 

弱者を徹底的に差別して、白黒はっきりしたい世界を作り出すために、トウジとゼロが繰り広げる政治結社「狩猟社」からの日本でのファシズム誕生。公然と謀略と暴力、テロを繰り返して、自分たちの信じる日本を作り出す。恐慌や世界情勢を踏まえて、カリスマであるトウジが若くして日本を変えていく世界。はっきり言って、強烈な小説だった。

 

ありえない極端な考え方である鈴原冬二のファシズム的思想。ただ、彼が歩んできた狩猟をベースとする適者生存論を徹底的に貫いていく様は、自分が理想とする完璧なまでに思想を実現しようとするとこうなるんだろうということがあざやかに伝わってくる。

 

小説を読んでいくにつれ、「弱肉強食」「適者生存」を極めていくと、たどり着く先は、強烈な社会が見えてくる。非常に不快になる時もあるが、なぜか鈴原冬二を支持したくなるところも多々あって、自分もファシズム的な考え方があるかもしれないと、ふと、恐くなることもある。利用する人間は徹底的に利用し、強者だけの世界を作り上げていく。こういう世界に自分がいた場合、どんなにものごとがはっきりするだろうと、鈴原冬二を支持する自分がいる。

 

読んでいくと、現代社会の制度やモラルや仕組みのなかで、眠っていた自分のなかの攻撃的な何かを思い出させてくれるような瞬間がある。

 

「適者生存」。農耕が始まった近年、本来は生きていくことができない人間が生きられるようになった。農耕はたった2万年前に始まった、たった2万年前。それ以前はずっと狩猟民族の時代であり、その時代は、生きるべきして生きるものだけが生き残っていた強者の時代だった。トウジはその世界を実現するためにその世界をつくっていく。

 

本来、アフリカなどで飢えている人たちは狩猟時代であれば、死んでいた。アフリカなどで飢えている人間は原爆で全員吹っ飛ばす、残った人間で、生き残るべき人間だけが生き残らなければ、食料も足らなくなってしまう。そうした考えをはっきり言っていることろは徹底的な主義・思想をつらぬいているトウジが話すと、なぜか説得力がある。

 

極めて危険な思想なのだが、世界的に不安な情勢のなかでは、人々は、カリスマを求める。この本がかかれて十数年経つが、だんだんこのような世界情勢になってきているのも事実。

 

トウジが思い描いていた世界を作ろうとしている時、自分が作った組織がシステム化され本来自分が描いていたものとは違うと感じるところは、考えさせられるものがある。

 

この本は、今の時代ではいけないとされている思想を全面に打ち出して、それを実現する過程が描かれている。共感するところも多々あり、否定するところも多々ある。

 

この小説を読んだ後、狩猟民族に関する本、経済に関する本を読み漁った。こんなことは今までなかったが、色々な意味で、様々なことを考えさせられる小説だ。

 

私たちは、白黒はっきりつけられない社会に住んでいます。おそらくグレーの部分が大半な世界なのだろうと、歳とかさねるたびに思います。しかし、白黒はっきりさせられたらどんなにいいだろう。もっとはっきりした世界だったら、どんなにいいだろうと思うことも正直ある。今、鈴原冬二がでてきたらどうだろう。自分が強者である自信は全くないが、それでも鈴原冬二をすがるかもしれない。

 

非常に重要なこと。この小説の思想は非常に危険で過去のファシズムは悪とされ、一部の人間以外はすべて不幸だったと教えられている。しかし冷静になってよく考えてみる。この本のファシズムは確かに大きな歪みはあるが、混とんとして不安定な日本の中で、一人のカリスマが幻想であるかもしれないが一筋の光や夢を与えたことは事実である。仮に、鈴原冬二の世界がファシズムで悪の不幸な世界だとすると、お金さえあれば裕福と考え、夢を追う子どもたちが減り、自殺者が増えている現在が幸福な世界ということになる。どちらがいいのかは決められることではない。

 

非常にいい小説でした。女性向きではないと思いますが、ぜひ、読んでほしい一冊です。

 

ありがとうございました。

分類

評価

コメント

SF政治経済小説 愛と幻想のファシズム

すごい、とにかく凄すぎる作品。5回以上読み返しました。

ランクの目安は下記を参考にしてください。

「やめとけ!買うというより読んじゃダメだ。」というレベル。

「やめた方がいい。買うと損するぞ。」というレベル。

「時間があったら読んでもいいんじゃない。」というレベル。

「割といい感じだと思う。」というレベル。

「すごくいいぜ!読む価値あるよ。」というレベル。

「絶対読んで!何が何でも読んでね。」というレベル。
選定した本及び感想については大きく偏っている可能性もありますが、実際に読みたかった本や話題の本などを自分の好みに合わせて読んでいるだけなので、何を意識したものでもありません。また、ここで記述されてある感想についても管理者自身の感想となりますので、何かを保証するものではありません。

読書好きのための良いものグッズ

『美月幸房』
ブックカバー 帆布製


Beahouse
ブックカバー/ブラック


Beahouse
ブックカバー/マーブルブラック


リサイクルレザー文庫版
ブックカバー/キャメル


etranger di costarica
ブックカバー四六判/ブラック


ワールドCP
ブックカバー文庫版/ブラック


レイメイ藤井
ブックメイト/ブラック


フランク・ロイド・ライト
ブックマーク MoMA


ブックダーツ
チョコラベル75個ミックス


愛と幻想のファシズム|村上龍|おすすめ小説ランキング関連ページ

五分後の世界|村上龍
五分後の世界|村上龍|おすすめ小説を紹介します。
ヒュウガ・ウイルス―五分後の世界 2|村上龍
ヒュウガ・ウイルス―五分後の世界 2|村上龍|おすすめ小説を紹介します。
69 (シクスティナイン)|村上龍
69 (シクスティナイン)|村上龍|おすすめ小説を紹介します。

 
おすすめ小説TOP 掲載小説一覧 プライバシーポリシー お問い合わせ