ヒュウガ・ウイルス―五分後の世界 2|村上龍|おすすめ小説ランキング

ヒュウガ・ウイルス―五分後の世界 2|村上龍

ヒュウガ・ウイルス―五分後の世界 2|村上龍 辛口感想

点状出血、内臓溶解、骨格筋の爆発的なケイレン。信じ難い致死率の出現ウイルスは何を象徴しているのか。ずれた時空の日本を襲う生存への最大の試練。世界人類が迎えた「最期の審判」を刻む衝撃。「5分後の世界」続編。

 

ということで、前作「五風後の世界」の続編となっているが、大きなテーマと舞台以外、全くの別作品と言ってもいい小説。

 

まず、この世界観がすごい。

 

日本が降伏せずに本土決戦を行った場合の世界は本当にシンプルで素晴らしいもの。人々の目的は「生きのびる」こと。そのブレない本質が存在するために、シンプルで無駄がなく誰もが誇れる日本がある。生きのびることを最優先事項にしたUGのシンプルなナショナリズムは、すべてのものを魅惑する。
今のゆがんだグレーな世の中にある種の警告を発してくれているのだろう。

 

CNNのジャーナリスト、キャサリン・コウリーが、ヒュウガ村で発生しているウィルスの取材で、日本国(アンダーグラウンド)軍のある部隊に同行する。その部隊は細菌戦の特殊部隊で、九州東南部の歓楽街ビック・バンで発生した新型の感染症に対処するとのことであった。新型感染症はウイルス性で、筋痙攣と内臓溶解を引き起こすものである。日本の敵であるアメリカを主体とした国連軍と共同で、そのウイルスに立ち向かうのだが、その過程で、外国人であるキャサリン・コウリーは、今までなぜUGが世界で注目され、畏怖され、尊敬されているのかをまざまざと見せつけられることになる。

 

アメリカ人であるキャサリン・コウリーが、自国の国連軍の兵士見たとき、その緊張感のなさにイラつく様は、前作で主人公の小田切が前に住んでいた本土決戦を実施しなかった世界との違いに愕然とした時と重なって見える。

 

また、前作同様、UGやそこに生きる日本人の誇り高きプライドが随所に見られて、なぜか目頭が熱くなることもあった。

 

キャサリン・コウリーが、物資の不足している様子を撮影したいと申し出た時、UGの兵士はこともなげに撮影を許可する。キャサリン・コウリーが、普通こういう風景は撮影させないと感想を述べるが、その時に兵士が言った言葉が忘れられない。

 

「確かに物資は不足している。たが、それは恥ではない」

 

「誇り」ということばは現代において日常的には死語に近いものになりつつあるが、「誇り高い」とはこういうことを言うのだろう。貧しくても衣服が貧相でも当たり前のように清潔さだけには気をつけていれば何も恥じることはない。

 

まわりの人を意識して、着飾り、みんなと同じもの身に着け、同じ価値観になり、それからはずれただけで、ハジかれてしまう今とは180度違う。

 

すべての人が同じ目的を持つことで、原理原則がひとつになり、今何が必要か、今何をすべきかが自然とわかってくる。

 

現代は、生きる目標自体が、選択肢が多すぎるために、あいまいで誰も何をやっていいかわからない。仮に五分後の世界がシンプルで理想的でもっとも幸福感を感じられる世界であるなら、その正反対のこの世界は完全に狂っていて、幸せとは正反対の世界なのだろう。

 

反対に、物資が不足して人口も少なく、毎日が戦闘状態でいつでも死が身近にある五分後の世界が「不幸」であるなら、生きる目的がはっきりせず、お金だけを欲して、常にまわりにいる他の人のマネをして、他国の価値観を押し付けられ、自分を殺して長生きしていくこの世界を「幸福」と呼べるだろうか。

 

「幸福」かどうかは本人の考え方ひとつで、幸せになりたいと思うといより、幸せを感じられる心を持ちたいと考えることが重要だと、誰かが言っていた。

 

日本人は、世界的にも幸福を感じていない人種だというデータも出ている。こんなに裕福で、モノが溢れているにも関わらず…。

 

おそらく、「誇り」を忘れてしまったからではないかと。

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評価

コメント

パラレルワールド小説 ヒュウガ・ウイルス, 五分後の世界

「五分後の世界」と比べても全くクオリティが落ちていない逸品。

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